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地域での「生きづらさ」の解決をめざして
アクションプランの新たな展開を

2011年8月6日

ライフサポート協会 常務理事 村田 進

 大阪市地域福祉推進委員会では、2012年から6年間の第3期地域福祉計画の策定に向けた論議が行われています。これと並行して、各区のアクションプランの見直しが検討されています。

 先日、住吉区のアクションプラン・コーディネーター会議に参加しましたが、2004年10月のスタート以来、8年目にはいった地域福祉アクションプランの活動も、一つの転機を迎えているように感じました。

 「地域福祉の推進」にむけて、2000年の社会福祉法の制定によって打ち出された「各市町村による地域福祉計画策定」ですが、目標期限の2003年どころか、2009年度末になっても策定市町村は48.5%にとどまっています。(厚生労働省調べ)

 大阪市では2004年3月に「第1期大阪市地域福祉計画」(2004年度〜2008年度)を策定し、より身近な圏域としての各区で地域福祉アクションプランを地域住民参画の下、作り上げることを決めました。しかし、当時、地域団体は行政の指示を受けて動く傾向が強く、地域の課題を自分たちで解決していく「住民参加」や「公私協働」への取り組みは極めて珍しいものでした。住吉区でも地域課題を明らかにするために住民の声を聞こうと「ワークショップ」を提案すると、連合町会から「何や?100円ショップか?」との声が出る始末でした。

 それでも、いざスタートしてみると、住民の声を集めて地域が独自に動くことへの共感は、確実に広がっていきました。私のコラム『「地域福祉」への取り組みが未来を開く』(2005年4月)には、スタート当初の熱気が溢れています。

 それ以降、計画調整局が主導する「未来わがまち会議」や、地域防災の取組みなどを通じて地域の課題を地域の住民が主体的に考え、解決していこうという動きが確実に広がってきました。

 さらに、橋本大阪府知事の「大阪都構想」に対抗するかのように打ち出されてきた「なにわルネッサンス2011−新しい大阪をつくる市政改革基本方針」(2011年3月)では、「地域から市政を変える!」と、行政、市民、地域などが力を合わせて支え合う新たな公共を作るとしています。主に小学校区をエリアとした「地域活動協議会」の組織化や、区行政に市民の声を聞き、公私の協働を図り、区民の評価を受けるための「区政会議」などの新たな組織設置も提案しています。

 まだまだ、中之島(市役所本庁)からの「改革構想」が区民に落とされ、既存の組織との関係を整理せぬまま新しい組織化が提案されるという従来の悪弊を残したものではありますが、受け止める地域の姿勢は明らかに数年前とは違った、より前向きなものになってきているように思います。

 住吉区のアクションプランでは、当初の地域住民によるワークショップで出された課題をもとに7つの部会が設置されましたが、数年の間に活動の停滞する部会もあり、今後の活動についての論議のテーマの一つに「部会活動の整理統合」が上がっていました。また、区レベルの活動よりも各地域での活動をどう進めるかに多くの意見が出ました。部会の活動を区内に広め、地域の課題として進めていくために、各地域との連携が不可欠になっており、各地域への情報提供やアクションプラン活動への参画にむけた「地域部会の創設」という提案も出てきました。そんな状況下での「地域協議会」や「区政会議」の提案に、アクションプランの独自活動不要論まで出かねない状況でした。

 一方で、地域包括支援センターの活動に典型的な、福祉専門家や施設・事業者による地域福祉推進の活動も、この間、確実に経験を積み上げ、具体的なケースを通じた地域の連携や、社会資源として地域と交流する取り組みなどが増えてきています。地域福祉の推進は「地域包括ケア」として具体的に推進されようとしています。地域包括支援センターが中核的役割を果たして、地域住民をはじめ各関係機関・事業所と連携して、「おおむね30分以内の日常生活圏域内で、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される」ことをめざす「地域包括ケアシステム」を構築していくことが目指されています。また、障害者支援の制度では「地域生活支援の推進」を中心とした改革が打ち出され、身近な地域での相談支援体制の確立が進められようとしています。

 時代のテーマは確実に「地域での支え合いづくり」に焦点化されてきています。

 もともと、地域福祉の推進をめざすアクションプランは、地域での「生活のしづらさ」の解消に取り組む活動です。これまで各地域で取り組まれてきた地道な支え合いの活動を評価して、より多くの人々の参加につなげていくことはもとより、いまだ手が付けられていない課題について区レベルで取り上げ、活動していくこと、そして、その活動の意義を区内に広めながら、いずれは地域の課題として地域に戻していくことが重要です。しかも、その地域の活動の推進組織は、単に地域住民だけでなく、地域包括支援センターなどの相談支援機関や福祉にかかわる事業者も巻き込んだ幅の広いものとして組織される必要があります。

 地域福祉アクションプランは、これまでの部会発信中心型の活動から、地域組織づくりをも推進するような役割へと発展していくことが求められています。