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沿革・あゆみ
「ライフサポート協会20年の軌跡」

前史〜法人のルーツ

 社会福祉法人ライフサポート協会のある住吉地区は「被差別部落」として差別されていましたが、その劣悪な環境や生活実態を改善しようと住民による「人権のまちづくり」が取り組まれてきました。

 1973年には「住吉地区総合計画実行本部」が設置され、「6つの原則」が定められました。この原則に沿って、70〜80年代にかけて住吉住宅の各棟が整備されていき、同時に地域福祉の拠点施設として住吉解放会館(のち住吉人権文化センター〜市民交流センターすみよし北)や住吉保育所が整備され、1986年には住吉総合福祉センターが開設されました。

住吉のまちづくり6つの原則

① 我々が永住するまちである
② すべての地域住民を対象とする町づくりである
③ 人間のつながりを大切にする町づくりである
④ 住民の健康を守る町づくりである
⑤ 子ども・老人・障害者がのびのびと生活できる町づくりである
⑥ 近隣住民に開かれた町づくりである

 住吉総合福祉センター(以下「総セン」と記します)は老人福祉センター・障害者会館・診療所の合築施設でした。老人福祉センターでは同和対策によるヘルパー派遣や相談事業を、障害者会館では障がい児の就学支援や機能訓練などの事業をおこなってきました。

 1989年には「総セン」内の地下に「オガリ作業所(無認可)」が開設されました。総センのご利用の方や地区内外の在宅で活動の場を求めておられた障がいのある方が軽作業などを通じて社会参加の活動を開始しました。

 1990年代に入ると同和対策事業から一般施策としての福祉事業への転換が課題としてあがってきました。同時に2000年からの介護保険制度の実施も視野に入れて、社会福祉法人設立により地域の福祉に取り組んでいく方針が立てられました。

1999年7月6日 法人設立

 1999年3月1日に開かれた第1回住吉地区社会福祉法人設立準備委員会は、設立趣意書の中で、法人が「人権のまちづくり」の取組みの中から設立されることになったことを明らかにしています。続く6月30日に行われた法人設立記念式典では大伴清馬初代理事長が、法人設立の原点を次のように説明されました。『21世紀を目前に設立される私たちの協会がめざす活動は、地域において住民一人ひとりが自分らしく生きがいをもって暮らしていくことを権利として保障すること、お互いを支え合いながら暮らしていける地域福祉社会の建設に貢献することにあります。当事者による「自己決定」を尊重し、自己選択できる障壁のない人権の保障された社会のしくみを築き上げていくということ、私たちの原点はそこにあります。』

大伴清馬初代理事長

大伴清馬初代理事長

設立時の職員

設立時の職員

 法人設立の経過と原点は、法人理念と使命に明確に反映されています。

法人理念
「すべての人が尊敬される社会の実現」(人権確立社会の実現)
法人使命
①人間の尊厳を守る地域生活への貢献
②一人ひとりが助け合い生きいきと暮らせる町づくり
③安定的事業の推進

 この理念は、差別を受け、社会から排除されてきた歴史を持つがゆえに、差別をなくし、すべての人の尊厳が守られる社会を、地域福祉活動を通じて実現しようという地区住民の長年の願いが込められていました。

1999〜2001年 法人の草創期

 法人が設立された当初は在宅高齢者支援が主な事業でした。2000年4月からは介護保険事業として展開していくことになります。

 当初、法人の職員は5名で、それまで同和対策事業として活動されていた大阪市同和事業促進協議会のホームヘルパーや総セン職員などが法人の活動を応援する形で一緒に関わっていました。法人事務所も総センの地下にあり、これまでの同和対策での福祉拠点をベースとした活動が始まりました。

 大阪市から受託した「生活支援型食事サービス事業」では、総センで地域の女性を中心としたワーカーズ「あやめ」による同和地域の高齢者のための会食サービスを継承する形で実施することになりました。配達については地域の高齢者等生きがい事業団の「かもめ」さんに、それぞれ業務委託することになりました。のちに調理は「なごみ」厨房に移行し、配達はNPO法人住吉高齢者障害者福祉事業団に継承されながら2016年度まで続きました。

2002〜2006年 なごみ開設と総セン受託〜障がい事業の開始

改装前の総セン

改装前の総セン

「総セン」は、同和対策でできた施設ではありましたが、地区内外の高齢者・障がい者の福祉の砦としての活動を続けていました。しかし2002年3月の同和対策事業の終焉を目前にして、地元では築き上げた福祉の活動をどう引継ぎ、発展させていくかの議論が深められていました。一方、法人内部では、2001年3月に行われた住吉区北西部地域福祉実態調査で明らかになった区内の障がい者支援のための社会資源が圧倒的不足している現状に対し、法人としてどう取り組んでいくかについての検討もされていました。

 これらの議論を踏まえて、法人としても2003年4月に総センの管理を大阪市から受託し、新たな一般施策を活用して地域の高齢者・障がい者の自立生活支援の事業を展開していくことを決定しました。

 おりしも無認可作業所だったオガリ作業所は2002年に「小規模通所授産施設」として認可され法人運営の傘下に入ることになりました。

 総センを事業受託した2003年は、障害者福祉事業も「支援費制度」として変革の時期にあたりました。児童デイサービスや精神障害者地域活動支援センター、および障害者デイサービス事業を活用したイブニングサービス(夕方からの通所)などをおこない、近隣へのニーズ調査でも明らかになった「余暇支援」を中心に、「相談支援」「生活支援」などの事業を積極的に展開していくことになりました。

 翌2004年には「じらふ」「ふうが」などの本格実施や、オガリ作業所の知的障害者通所更生施設認可と住吉東駅前の現施設への移転となりました。

 そして2004年には「地域自立生活支援センターなごみ」が開設され、特別養護老人ホーム、および総センから移転した在宅介護の介護保険事業の拠点として新たなスタートを切りました。

 この施設は2001年の住吉区北西部福祉実態調査でも明らかになっていた高齢者の暮らしの場の整備についての課題に応えたものですが、できる限り在宅生活のイメージを変えない形での施設構造や支援のあり方を追及しました。開所から15年が経ちましたが、この間でも上履き制への転換や、ユニット単位での食事提供、他部門や他法人との交流の促進など、「施設」の暮らしではなく「在宅」に近い支援の形を模索しています。

 さらに2005年には2ヶ所目の児童デイ「じらふ住之江」を開設し、知的障害者デイや短期入所も併設、また障害者グループホームも開設しました。

 ライフサポート協会はこの数年で「在宅高齢者支援」だけの事業から、障がい福祉事業や入居の支援まで含めた「総合的な地域福祉の拠点」として幅を広げたのでした。

2007〜2010年 地域福祉の本格展開を見据えて

 「なごみ」「総セン」の2つの基幹施設と、オガリ作業所や「じらふ」といった周辺の事業所の形で推移してきたライフサポート協会ですが、大阪市からの指定管理制度による「障害者会館」「老人福祉センター」の運営は継続していました。(診療所については医療法人ハートフリーやすらぎが設立され、運営されるようになりました)

 ライフサポート協会では市の委託費用を活用して介護予防のデイサービスや啓発講座、ご利用者の余暇支援や活動の場が広がる各種イベントや教室(囲碁や料理、陶芸やギター、リズムボクシングなど)を開催、当時の児童デイサービスがカバーしていなかった分野にあたる障がいのある中高生のサークル「みつば」などを実施して、介護保険制度や障がい福祉制度では対応できないニーズにも応えてきました。

 しかしながら、老人福祉センターは2006年度末をもって、障害者会館も2011年度末をもって条例廃止にともない委託終了廃止となっていきました。しかし、単に財政的裏づけがなくなったので終わりという形にはせず、「どうすれば制度内であっても利用者のニーズや地域の要望に応え、かつ法人理念にもあった形で展開できるだろうか」について討議を重ねました。

きずな名物「カレーうどん」

きずな名物「カレーうどん」

 その答えのひとつが「小規模多機能型居宅介護」でした。2006年度の介護保険制度改訂で誕生した事業で、通所・訪問・宿泊がひとつの事業所から一体的に提供されることで、在宅でありながら柔軟な利用が可能になるという利便性のみならず、地域運営推進会議などで地域住民とのつながりも確保され、地域で長く住まわれてきた住民にとっても地域の中でのつながりを切らさずに生活が継続できる機会になりました。「きずな」と名づけられ、地域の盆踊りへの出店参加やバザーなどの企画での交流をはじめ、日常的に利用者・職員・地域住民とのつながりが維持継続できる拠点になっています。

 

 さらには2010年からは大阪市より「住吉区北地域包括支援センター」を受託しています。地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関ですが、大阪市ではこの年から社会福祉法人にも委託をするようになり、ライフサポート協会としても積極的に応募していく方針で臨みました。以来、専門職の協同と地域の相談機関との連携、地域住民組織との連携、法人内でも各事業所などとの連携を創りあげていき、多くの関係機関の要としての役割に応えられる部署となっています。

 2009年のライフサポート協会設立10周年記念式典においては「法人第3期中期計画(2008〜2011)」として、「地域福祉の推進」を第一の課題に据え、包括支援センターや地域密着型サービスや障がい福祉事業の展開について内外に計画を公表しています。以降は福祉制度改訂に合わせて第4期(2012〜14年度)・第5期(2015〜17年度)・第6期(2018〜20年度)と中期計画を策定・公表しております。

2011年 大領地域の家であい開設

大領地域の家であい壁画お披露目

大領地域の家であい壁画お披露目

 2011年5月に「大領地域の家であい」を開設しました。ライフサポート協会設立以来10年余りの実績を踏まえて、今後のあるべき姿として「地域とのつながりをより大切にした事業」「高齢者・障がい者といった制度上の垣根を越えた『地域の家』としての、どんな状況の方でも関わりあいながら集える事業」を形にしたのが、「大領地域の家であい」でした。

 そのため高齢事業では「地域密着型サービス」でもある2ヶ所目の「小規模多機能型居宅介護」と、24時間365日の生活を支える居住の場「認知症対応型グループホーム」を開設しました。

 障がい事業では3ヶ所目の「生活介護」を設置し、従来の通所の場では活動の一部でしかなかった「アート表現」をメインの活動内容に取り入れ、従来の生活介護事業所との住み分けを図りました。そして、障がい者グループホームや短期入所(単独型)も併設としました。障がいのある方の生活の場が、複合施設内にあることについては批判もありました。しかしながら、現在の報酬基準や職員配置に対するハードルや人材確保難を思えば、従来の一般住宅活用のホームではADL面において自立した方しか受入が困難な状況でした。「であい」のホームでは、高齢者の住まいも含めた拠点集約がなされている造りであり、より重度の障がいのある方の利用が可能になっています。

 このような多様なねらいをもって開設した大領地域の家であいです。年1回の「であい感謝祭」は施設をあげてのイベントとして定着し、元バーテンダーだった小規模多機能型居宅介護の利用者さんがマスターとして地域の皆さんをおもてなしする「Y’s Bar」、生活介護利用者によるアート活動を展示する「るーぶアートギャラリー」など個性的な企画もすっかりおなじみになりました。

2012年〜 組織体制の整備と実践力の向上に向けて

 

 2010年代に入っての事業展開によってライフサポート協会の職員数は急激に増えました。右上図は正職員数の推移ですが、2009年からの2年間で1.5倍の規模になっています。

 この時期にあたらめてライフサポート協会職員としてのあり方を示し、拡大する組織の中においても理念と事業の運営について方向性を見失うことがないように「実践行動指針」と「倫理綱領」を策定しました。

 同時に「働き続けることのできる職場」をめざし、多様な働き方ができるように「短時間正職員」制度を導入しました。制度創設以来14名(19回)の利用がありました。

【実践行動指針】 当時の職員の手書きで作成し、各施設に掲示しています

【実践行動指針】 当時の職員の手書きで作成し、各施設に掲示しています

 さらには、他法人や他の事業所との協同での研修会や「事例検討会」、「実践報告会」、を研修で取り組み、高齢・障がいの部門を超えて状況を交流し、職員の実践力を高める契機にもなっています。

実践報告会の様子実践報告会の様子

 また、「意思決定支援に関する研究会(清水由香大阪市立大学助教を座長とする)」については、知的障がいのある人や認知症の方の意思への職員間有志での検討を重ね、2017年2月には日本女子大学の林裕康教授をお招きして公開の研修会をおこないました。

 

「福祉教育勉強会」では大阪教育大学の新崎国広教授、金森裕治名誉教授の助言も頂きながら区内の小中学校での実践も積み上げてきました。とりわけ住吉区内の学校法人白頭学院建国小中学校での学年進行に応じた福祉教育プログラムの協同作成と実践は担当の梁真規(やん ちんぎゅ)先生のご協力も頂きながら12年間の実践が積み上がるに至りました。

 

 その他では、福祉従事者を応援する研修会として2018年から「大人塾」も開催しています。研修講師で来ていただいた講師の方や、福祉事業に何らかの形でかかわる職員・トレーナーなどを招聘し、トークライブ形式でお酒やおつまみを頂きながら楽しむ場でもあります。「西陣麦酒計画」という京都の障がいのある方の地ビール生産計画があり、地ビール「柚子無碍(ゆずむげ)」がこの時には登場します。「べらしお福祉・コブンカフェ」のスペースを活用してのチャーシューなどのおつまみも大好評。もちろん講師のお話をリラックスした場ながら、真剣に聞く聴衆者・・・関係者のネットワークもあって、さまざまなところからお越しいただいている名物企画になっております。

2010年〜 地域福祉推進の取組み

 第3期中期事業計画の課題でもあった地域福祉の推進は、もとより住吉総合福祉センター内の事業としてのボランティア担当の設置や福祉教育の勉強会などにもつながり、従来から地域住民組織との協同の場もありましたが、2010年の「住吉区北地域包括支援センター」の受託以後はさらに機能強化されていきました。

 

 法人としても包括部門だけでなく、他の部門もその意識を共有することを目的に、地域福祉について深める「地域自立生活支援研究会(故岩間伸之大阪市立大学教授を座長とする)」では地域福祉の視座をもっての現場の支援について検証を重ね、2013年2月には「地域福祉セミナー」を開催、2015年3月には「住吉区孤立死ゼロフォーラム」にも参加しました。単に福祉事業をおこなうだけでなく、住民の参加による地域の見守り機能を高め、住民の中にも認知症や各種の障がい理解が広まることで共生社会への構築に向けた取組みをおこなってきました。
住吉区地域見守り支援システムでは、高齢者や障がいのある方のおられる世帯を希望に応じてネットワークに入って頂き、常日頃は声かけや見守りをはじめとしたかかわりを行い、専門職は必要な場合には関わることもでき、災害時には安否確認や避難支援にいち早く向かう対象としてリストアップされる仕組みを盛り込んでいます。

 さらに高齢者は介護保険、障がいのある人は障害福祉サービスといった縦割り制度の枠を超えて「制度のはざ間」におかれている方にも迅速に対応できるコミュニティーソーシャルワーカーを住吉区助成のもとライフサポート協会にも2014年から配置して、生活困窮世帯や複合的な課題を抱える世帯などへの個別対応と、地域とのつながりづくりや各種のイベントを企画するなどで活躍しています。

2012年〜 障がい事業の展開

【2012年:総セン通所就労継続支援B型(フード班)】

 もともとは総セン内で生活支援型食事サービスの食事作りをおこなっていた厨房スペース。食事作りがなごみに移行して以来、活用できていなかった厨房設備を転用し「ラーメン」を提供する障がい者支援事業所に模様替えしました。

 総センの原田館長が行きつけだった堺市にある「天日塩らーめんべらしお」の技術支援も頂いて、同種の機材と材料の提供により、本格的ならーめんをお出しすることが可能になりました。現在は併設する「コブンカフェ」とともに作業に取り組んでおります。

 関西のラーメン店とのコラボイベント「らぁ祭」への参加から、イベントTシャツのプリント事業などにも広がり、日々発展しているフード班です。

【2014年:つみき】

 障がいのある子どもさんを対象にしている放課後デイですが、「じらふ」は大阪市内でも最も老舗の部類にあり、多くの利用者がじらふを「卒業」していきました。その際に「オガリ作業所」などの生活介護事業所を利用される方もおられる一方で、いわゆる障がいのある人の「高校(支援学校高等部)卒業後の学びの場」についても、その必要性を感じて実践している事例が全国ではいくつかありました。

 つみきはそうした「青年期障がい者の学びの場」あるいは「作業を中心とした活動になじめなかった方の学びなおしやつながりづくりの場」として2014年に開設しました。制度では「自立訓練(生活訓練)」を活用し、制度上の利用期限2年(原則)が設定されているため、2年間のプログラムで「コミュニケーション」「調理」「ダンスなどの表現活動」「キャンプなどの野外活動」などを経験します。利用者さんは「学生さん」。「1年生」「2年生」などと呼称し、お互いを意識したり、交流を深めること、トラブル時の対応など、職員だけで解決しようとせずに、できる限り学生さん自らが気づき考えることを大切にしてきました。

 別途、精神障がいの方などには訪問での支援も行なえる場として「サテライト」事業も実施していましたが、必要性や有意性は高かったものの、利用者数が少なかったため事業は縮小・廃止としました。

 さらに、年限制の制約を超えて活動できる選択肢も用意することを目的に、2019年からは利用期限のない「生活介護」も併設としました。

 つみき利用をきっかけに「自宅でも食器洗いをするようになった」「意思表示がわかるようになった」などのお声も頂き、障がいのある方の通所のあり方にも幅が広がったと感じています。

【2016年:大領COCORO】

 2016年には大領4丁目に4ヶ所目の生活介護事業所と、未就学児の療育をおこなう児童発達支援事業所を併設した「大領COCORO」が開所しました。

 大領地域の家であいの小規模多機能型居宅介護利用者だった大野様のご家族の方から「相続した土地をライフサポート協会の事業で活用してほしい」と申出を頂き、福祉事業所用の仕様として建設していただいたものです。

 障がい者通所生活介護は障がいの重い方の通う場ですが、障がいの状況も年齢も活動する希望や趣向も多様です。大領COCOROでは知的障がいの方の作業活動をする「つなぐ」と身体に重い障がいがあり、入浴をはじめとする身辺面の介護とレクリエーションや機能訓練をあわせたプログラムを設定した「ひなた」と2つのグループで活動しています。特に入浴介護を行なえる事業所は少ないこともあり、医療設備面やスタッフの確保の困難さから十分に期待に応えきれない面はありますが、生活面での充実を図る上でも貴重な社会資源と考えています。

 児童発達支援では、障がいのある子に対してのご家族の相談にも対応しつつ、音楽療法や言語聴覚士さんも関わって、子どもたちの療育活動をおこなっています。2019年度からは愛称を従来の「SODATERUじらふ」から「つばめ」と改称しました。

【2017年:コロたま倶楽部】

 2017年からは地域活動支援センターA型事業である「コロたま倶楽部」の運営をおこなっております。従来は社会福祉法人野菊の会が運営してきたのですが、諸般の事情によりライフサポート協会に移行したものです。

 現在は約10数名の方が「カフェ」と「軽作業」に分かれて活動しており、季節のイベントを取り入れたランチの提供などもしています。精神障がいのある方も多く、気持ちの変調もある中で、安定的に通所も難しい方もおられますが、居心地のいい・やりがいのある場として、「ふうが」のサロンとはまた異なる機能を持っています。

2013年〜 泉北拠点の整備

 設立以来大阪市内で事業展開をしてきたライフサポート協会ですが、2013年に堺市南区泉北エリアに初めて事業所を設けました。療育相談を通じて、じらふへの支援を頂いてきた「まーさん」こと中谷正恵さんが拠点とする堺市泉北エリアでもライフサポート協会の事業実施を求める声を受けてのことでした。

 

 原山台の団地群の近隣センター内に設置したのが「じらふ泉北」(放課後等デイサービス)です。障がいのある子どもたちの利用する場というイメージだけでなく、様々な人の交流が図れるようにと、定期的にカフェを開いたり、オガリ作業所の焼き菓子などの販売などで近隣住民や子どもたちの出入りができる場にしました。

 

 2015年には高倉台に「みんなのマーケットるぴなす」(就労継続支援B型)を開設しました。泉北ニュータウンの高齢化を背景にした地域の課題に対応するために、行政や地元のまちづくりNPOなどとの協働もあってスタートしたプロジェクトです。

 さらに2018年には「はぴな」(生活介護)を高倉台に開設しました。「じらふ泉北」を卒業した利用者の通所の場として開設しました。2020年には新しい拠点に移転をして定員も拡大する予定です。

 泉北地域は大阪市内とは異なり、自然に恵まれた環境も手近にあるという特徴も有するため、地域の農園との連携による野菜の仕入れや手絞りのジュースや加工品の製造などの可能性も有しています。同時に高齢者や生活困難な方の支援も兼ねた作業の場作りや住まいの確保など含めた総合的な支援についても、検討していく必要があります。

地域公益活動

 2017年の社会福祉法の改正実施によって、社会福祉法人改革が進められることになりました。組織体制や役員構成も変化を求められ、この機にと藤本俊彦第2代理事長が勇退し、村田進常務理事が第3代理事長に就任することになりました。

 法人制度改革の中心は「高い公益性・非営利性の徹底」であり「運営の透明化と説明責任及び地域社会への貢献」にあるといわれています。これに伴って「地域公益活動」についても実施を求められることになるのですが、ライフサポート協会では、従来から前述の「福祉教育」をはじめ、地域福祉や制度のはざ間も意識した運営をおこなってきましたが、近年では地域の状況を踏まえ、利用者のニーズを拡張する形でいくつかの事業を加えています

【「地域食堂」通じたコミュニティー支援:ごはん倶楽部・なごみ食堂・るぴなす ‘みんなの食堂’ 】

 

 2016年から毎月取り組まれているのが「地域食堂」の企画。オガリ作業所でおこなっている「ごはん倶楽部」では、障がいのある方の一人暮らし支援からのスタートでした。みんなでわいわいと食べるという個別ニーズに応えるだけでなく、地域にも広く呼びかけて、通りかかった単身者も独居の高齢者も、外国から日本にこられた方などに至るまで多様な方々の参加で「作って食べる」企画にまで発展しました。「なごみ食堂」は特養の入居者さんが、地域の人たち、とりわけ子どもたちとの交流をしたいというニーズもあって開始しました。管理栄養士監修のもとメニューはカレーで統一しながら、内容は毎月ちょっとずつ変化をつけています。るぴなす「みんなの食堂」は土曜日の朝からの開始。泉北ニュータウンにも孤立した世帯や地域コミュニティーの希薄化といった課題もあります。スーパーマーケットの特性を活かしてお惣菜を作り、ボランティアさんの協力も得て楽しくみんなで頂きます。これらは決して「子どもの貧困対策」という目的が前にあるわけではないのですが、障がいのある人も特養の入居者さんも地域の人として、つないでいくことにねらいがあり、ひいては困難があっても見捨てない地域として機能する一助になればと考えています。

【相談機能とコミュニティー支援機能を:「きまぐれカフェ」「オレンジカフェ」】

 きまぐれカフェは地域住民がなごみの地域交流スペース活用した喫茶に集う中で、住民さん同士の話の中から生まれました。気軽に集えて悩みを話したり、相談もできたらいいなという声を受け、月に1回「なごみ地域交流スペース」をコミュニティーカフェにお貸し出しするとともに、地域包括支援センターからも相談員が参加し、情報提供や相談対応でお手伝いをさせて頂いております。

 オレンジカフェは大領地域の家であいの2階の地域交流スペースで「認知症について学ぶ」「悩みを話しあったり交流できる場」として運営しています

【イベントや相談を通じたコミュニティー支援:「コモン喫茶」「らふら」】

 日ごろの業務を通じて住吉区北地域包括支援センターやこころの相談ネットふうがと公益財団法人住吉隣保事業推進協会や地元町会などと状況の交換をすることがあります。その中で「若者支援」「子ども支援」「現役世代への支援」が制度の中のネックになっているケースもありました。経済的な困窮もあれば、孤立や逸脱といった問題を抱える方や世帯。個別の支援対象にするという方法ではなく、もっと自然な形で地域の中に居場所をつくれないか?こうした問題意識も踏まえて、2014年から不定期に「コモン喫茶」という名称でイベント開催をしてきました。

「誰もが気軽に立ち寄れて過ごせるみんなの居場所」「人と人がつながってお互いに“勇気や元気の引き出しあいっこ”」ができることをコンセプトに始めたものです。パーティーや地域探検などの企画を重ね、地域の課題についてみんなで考え、支え合える仕組みを作るべくすすめています。

 その流れで「子育て世帯の孤立」や話せる場がほしいというニーズも受けて、2016年からは住吉東駅前の旧喫茶店だった場所を借り受け「らふら」というスペースを開設しました。「子育て世帯に使っていただける製品のセレクトショップ」、「子育て世帯を中心とした地域住民の交流スペース」をしています。

 

 障がい者施設で利用者さんたちが一つ一つ丁寧に作った、おしゃれでかわいい商品を取り扱い、奥には子どもたちが遊べるファミリースペースを開放。不定期に親子で参加できるワークショップを開催しました。

 その中から、2018年には自分たちでも製品を作ろう・・・と縫製作業を試行的に開始。「ユニクロ」などのアパレル企業からの端切れ布やファスナーの提供を受けて、アップサイクル(Upcycle)商品(廃物をそのまま再利用するのではなく、商品としての価値を高めるような加工を行うこと。古布や廃材を用いて、しゃれた小物を作るなど)を作成すべく、デザインについては大阪モード学園専門学校の学生の支援も得て、商品化にこぎつけました。

 2019年度には厨房や介護現場で働く障がい者支援をする「介護調理班」とともに「縫製班」もオガリ作業所就労継続支援に新たに立ち上げて、より多様な状況の方の活動の場にもつなげました

 

ライフサポート協会20年のあゆみ<年表>
法人の事業・活動(■は事業開始) 地域や社会の動き
1999 ・7月6日法人登記(設立記念日)
■高齢者デイ・在宅介護支援センター開始
■高齢者ヘルパー開始
 
2000 ■居宅介護支援事業開始
・介護保険制度施行に伴い「通所介護」「訪問介護」などの介護保険事業開始
・介護保険制度施行
・社会福祉法施行(社会福祉事業法改正による)
2001 ・住吉区北西部福祉実態調査に参加
■生活支援型食事サービス事業開始
・世界保健機関が国際生活機能分類(ICF)を採択。
2002 ・住吉区地域福祉計画モデル事業
・総セン改修工事
・「なごみ通信」発行開始
■オガリ作業所小規模通所授産施設認可:法人に事業継承
 
2003 ・法人が総セン(障害者会館・老人福祉センター)受託
・隔週土曜日で児童デイサービス開始
・「総センまつり」開催(06年まで毎年)
・「総センだより」発行開始
・障がい者支援が措置から「支援費」に変わる
2004 ■障がい児者余暇生活支援センターじらふ開設(帝塚山コンド内にデイ事業所設置)
■「なごみ」開設:特養開所
■こころの相談ネットふうが開設(サロンは総セン2階:現きずなの場所)
■障害者ヘルパー開始
■オガリ作業所駅前へ移転。知的障害者通所更生施設として認可。定員40名に増員。製パン班誕生、お店「パンプ」オープン
・ウエブサイト開設
2005 ・なごみ厨房業務を日清医療食品㈱に委託
■じらふ住之江(当時は児童デイ・知的障害者デイ・短期入所の併設)開始
■障がいグループホームだいく(住吉住宅の活用)開設。定員4名(2室)
・発達障害者支援法施行
法人の事業・活動(■は事業開始) 地域や社会の動き
2006 ・総セン老人福祉センターは廃止。障害者会館のみ大阪市から「指定管理制度」で2年間の受託。(最終的に2011年度まで)
■障がいグループホームだいく拡張(愛称「かのん」)定員8名(4室)
・高齢者虐待防止法施行
・認定子ども園制度施行
・介護報酬改訂(地域密着型サービス制度創設・予防給付創設)
・障害者自立支援法施行(利用者の応益負担導入と制度体系改訂)
2007 ・障がい者制度の新体系移行
(通所更生施設・障がい者デイサービス→生活介護/小規模通所授産→就労継続支援/行動援護の創設など)
■小規模多機能型居宅介護きずな開設
・「なごみ通信」「総センだより」の2つの広報誌を統合し「ライフサポートだより」発行開始(毎月発行だった総センだよりの48号以降を継承)
・第1回「利用者アンケート」などの実施
・大伴初代理事長逝去により、藤本俊彦理事が第2代理事長に就任
・「ライフサポートまつり」としてこの年より法人全体で開催
2008 ・じらふ住吉、賃借物件(帝塚山コンド)から、総セン2階に移設 ・住吉区役所・区民ホール等
現庁舎に移転
・社会保障国民会議設置
・リーマンショック世界同時不況
2009 ・法人10周年記念事業 ・民主党を中心とする政権に交代
2010 ■住吉区北地域包括支援センター受託
・なごみ訪問介護・居宅介護支援・じらふヘルパー・児童デイの事務所を万代5丁目の物件に移設(地域包括支援センターをなごみ内に設置のため)
■じらふ難波開設
■じらふ街道・大社北開設
・法人内にてノロウイルス感染拡大
・障害者自立支援法違憲訴訟、和解条項成立
法人の事業・活動(■は事業開始) 地域や社会の動き
2011 ■大領地域の家であい開設(認知症対応型グループホーム・小規模多機能型居宅介護・障がい通所生活介護・障がいグループホーム・障がい短期入所)
・地域自立生活支援研究会(岩間研究会)発足
 
2012 ■総セン通所就労継続支援B型開始(生活介護との多機能型に変更し定員40名へ)フード班として「べらしお福祉」「コブンカフェ」がオープンする ・介護報酬・障がい者支援制度報酬改訂(地域包括ケアの推進の明記・児童デイサービスを放課後等デイと児童発達支援事業に移行)
・障害者虐待防止法施行
2013 ・短時間正職員制度導入
・法人倫理綱領・実践行動指針策定
・「すみすみ」・・・住吉・住之江区の障がい事業所連絡会立ち上げ
■じらふ泉北(放課後等デイ・ヘルパー)開設
・日本が国連障害者権利条約を批准する
・障害者総合支援法施行(障害者自立支援法を改訂)
2014 ■生活訓練つみき開設
■住吉区地域見守り支援事業でコミュニティーソーシャルワーカー(CSW)配置
・あべのハルカス開業
2015 ・住吉区孤立死ゼロフォーラム開催
■みんなのマーケットるぴなす(堺市泉北高倉台:就労継続支援)開設。泉北ニュータウンのスーパーマーケット再生プロジェクトスタート
・介護報酬・障がい者支援制度報酬改訂(介護予防日常生活支援総合事業創設)
・生活困窮者自立支援法施行
・「大阪都構想」住民投票
2016 ・「ごはん倶楽部」「なごみ食堂」「るぴなすみんなの食堂」などの地域食堂を開始する
・「らふら」第1回ワークショップ開催
■大領COCORO(生活介護・児童発達支援)開設
・住吉隣保事業推進センター(すみよし隣保館寿)竣工
・障害者差別解消法施行
・部落差別解消の推進に関する法律施行
法人の事業・活動(■は事業開始) 地域や社会の動き
2017 ・社会福祉法人制度改革による役員体制の変更(理事・評議員の定員変更など)
・藤本理事長勇退。村田進常務理事が第3代理事長に就任(写真→左が藤本前理事長・右が村田理事長)
・運営協議会設置
・「らふら」セレクトショップオープン
■コロたま倶楽部を社会福祉法人野菊の会から事業継承する
・社会福祉法改正施行(社会福祉法人のガバナンス強化等の改革)
2018 ■みんなのマーケットるぴなすのサテライトとして生活介護事業所(はぴな)が泉北高倉台に開設する
・特養なごみユニットでの自家調理に変更
・介護報酬・障がい者支援制度報酬改訂(放課後デイなどの削減)
・旧市民交流センターの「オガリ像」撤去。沖縄に移設
・大阪メトロ・大阪シティバス発足(旧大阪市交通局)
2019 ■つみき自立訓練と生活介護の多機能型事業所に変更する
・厨房業務(なごみデイ・障がい通所の昼食)を直営に変更(日清医療食品への委託終了)し、法人職員による提供となる
オガリ作業所就労継続支援B型「介護調理班」も厨房作業に加わる。
同事業所「縫製班」も立ち上げる
 

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