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住民の参加と決定の仕組みがあってこそ
身近な地域でのワンストップ相談・地域の支え合い活動との連携

2011年6月20日

ライフサポート協会 常務理事 村田 進

 東日本を襲った未曾有の災害が未だ復旧への見通しも立たない状況下、国政の混乱が続いています。これからの日本の進路を左右する「社会保障と税の一体改革」も、6月20日にも政府案が取りまとめられるはずが、与党内の増税反対論などで実現への道が不透明となっています。政治の貧困が国民生活の安全を脅かす事態になってきています。

 先の統一地方選挙で大躍進した大阪維新の会が提唱する「大阪都構想」に対し、大阪市が急遽、有識者会議「行政区調査研究会」(顧問:神野直彦東大名誉教授)を立ち上げて「合区」等について検討を始めています。11月に予定されている大阪市長選挙に橋本府知事が出馬して府・市のダブル首長選挙となるのではとの情報もあり、来年からの大阪市行政がどうなるか予測できない事態となっています。

 実際、「大阪都構想」については賛否あり、その具体的な内容が未だ明らかになっていないため評価をすることは困難ですが、維新の会も有識者会議も、「大阪市行政の効率化」を目指しているとすれば十分論議を尽くしてくれればいいとしか言えません。

 ただ、これらの議論に地方自治の原点である地域住民の参画と決定の仕組みについての具体論があいまいである点に大きな危惧を覚えています。

 率直に言って、区長の権限が大きくなること自体で区民の声を反映させるようになるとは思えません。例え、区長が住民投票で選ばれても、区行政推進上の判断は声の大きい人や団体によって左右され、地域にミニ利権構造が生まれるに過ぎません。

 区民の声を聴くためには、区民の声を集める仕組みが必要ですし、日常的な地域での生活の中で埋もれている課題や願いを集めて区行政に届ける仕組みが求められています。高齢化している従来の組織(地域振興会や地域社協など)だけでは、多様な地域の声を反映しているとは思えません。幅広い住民、特に若い住民の声を集められる新たな仕組みが必要ではないでしょうか?

 厚生労働省は「地域包括支援システム」をこれからの地域福祉推進のキーワードとして提唱しています。「おおむね30分以内の日常生活圏域内で、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される」というこのシステムでは、地域包括支援センターを核としながら各サービス事業者が連携するだけでなく、地域住民や活動家が助け合う活動も積極的に育成し、一緒に支え合う地域をつくって行こうというものです。

 高齢、障害、母子などの問題だけでなく、生活の困難に直面してるあらゆる問題について、身近な地域でのワンストップの相談窓口が開かれており、そこには専門機関の職員ばかりでなく地域の相談活動に取り組む住民も一緒に配置されていること。また、配食や見守り活動などの地域住民による助け合いの事業や活動としっかり連携されていること。そんな地域の拠点が身近な所に配置され、住民と一緒に運営されていく中で、地域の住民の課題と声が確実に拾われ、行政に届けられていく可能性がでてくるのではないかと思います。

 大阪市社会福祉審議会は、今年3月に「大阪市における総合的な相談支援体制の充実に向けて」という提言をまとめています。その中で「身近な地域における総合的な相談支援機関の設置」や「住民主体の地域福祉活動の活性化」が打ち出されており、今後、年内にはまとめられる「大阪市域福祉計画」「大阪市高齢者保健福祉計画」「大阪市障害者支援計画」にこの課題がどう具体的に反映されるかが注目されるところです。