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「支援(ケア)の質」について

2014年10月

 特養なごみ施設長金光です。

 特養の施設長になって半年が過ぎました。まだまだわからないことは多いですが、その中でいろいろなものを学ばせてもらいました。

もみじイラスト 特に考えさせられるなあと思ったのは「支援(ケア)の質」についてです。これは私の個人的な所感ですが、福祉で生計を立てていこうとする方は、ただ単に生活するためというだけでなく、何らかの「人」に対する思いがあってこの職に就いているのではないかと思っています。その思いが、福祉のサービスの利用者の思いを受け、形になっているのがケアプランであり、個別支援計画であり、実際に関わる場面での支援(ケア)であったりするのだと思います。現場職員はその「支援(ケア)の質」を高めるために関係性をとるのが難しい方々と時間をかけてゆっくり関係性を築き、その方の今の生活の質を高めたり、将来の展望が拡がるように支援(ケア)の内容について利用者の方やその家族の方と一緒に考え、築いています。

 利用者本人の思いを簡単に聞き取れるなら、おそらく誰でも出来るでしょう。しかし、その思いを聞き取ることが本当に難しく、本人の思いを受けたケアプランないし支援計画を立てることができるかどうかは支援者の力量にかかってくると思います。

 すぐに利用者と関係性が築け、その方の思いや状況にあったプランを提示できる支援者がいるかもしれません。しかし、大半の支援者は継続的な関係性や日々少しずつ変化する利用者の状況に寄り添って、少しずつケースを積み上げていると思います。もちろん、利用者の方もそういった徐々に築き上げた関係性に安心感を覚え、信頼関係が構築され、利用者の方の状況を深く確認し合えるようになり、「支援(ケア)の質」も高まると思います。もちろん、長い年月の間に慣れ合いになり、本来の支援の部分とそうでない部分の境界線があいまいになり、その支援者でないと都合が悪いというケースがでてくるかもしれません。しかし、支援者が利用者との距離感をしっかり保ちながら築いていく関係性ができれば、それは一朝一夕ではできない、利用者・支援者ともに大切なものではないかと思います。

 入居者や利用者の方との関係性を構築することでその方に対するアセスメントがより意義のあるものになり、個々の支援の軸になるケアプランもしくは個別支援計画を立てることができます。その出来上がったケアプランも、形式的に仕上げるだけでは机上の空論になってしまいますが、意外と形だけになっているプランは多いのではないでしょうか?プランの実施に対してどれぐらい実施可能なのか、そのプランをする意図や必要性をどのぐらい周知出来てチームとして取り組めるのか、その見直しを関わるスタッフが意識をしながら問題点や良かった点を見ることができているのかなどの点ができて初めて本当の意味でのケアプランや個別支援計画を立てる意義に繋がると思います。個々の支援の軸であり、支援の内容を当人や支援者同士が共有するための大切なツールとして活かすのかそうでないのかは、組織やチームの認識で大きく違ってくるのではないでしょうか?

 支援者の中で、わかっていながら陥りがちなのは、入居者の方や利用者の方を一人ひとり大切に見ていく視点だと思います。支援者は複数の利用者に対しているのは必然だと思いますが、利用者の方からすれば、一対一の関係がまずありきなのです。これはヘルパーでも相談職でも同じです。関わっている時はマンツーマンでも、次の段取りを考えてその人の支援を疎かにしたり、その人が危急の場面でも気づけずに普段通り後回しにしてしまったり、その人に対して表面上しか向き合っていなかったりすることもあるかと思います。集団生活の場の入所・通所の施設では顕著に表れるかと思います。意識していても多対一になる状況が恒常的になると、「一人ひとりの集合体が集団」という意識が薄れ、「集団の中の一人」という認識になってしまいがちです。個々の支援に繋げるためのグループワークのはずが、グループワークをすることが目的になっているケースが多いかと思います。特に気を付けなければならないのは行事やイベントごとかと思います。どうしても行事やイベントの企画ありきになってしまい、いかに個々の支援に繋げていくのかという本来の必要な意図を外してしまうことがあります。行事やイベントは何を目的に行うのかを明確にすることで、その意味を成すと思いますし、逆にその意図が明確でない行事やイベントをすることで個々の支援の時間をとられるのであれば、する必要はないかと思います。

 もちろん、グループワークやグループダイナミクスは必要ですし、実施していかなければならないと思いますが、支援の本質はあくまで「その方個々の支援」にあり、それを活かすための環境作りがグループワークでありグループダイナミクスだと思うので、多対一の中であっても、気持ちは常に一対一で一人ひとりに向き合う姿勢を忘れずに「真摯」な対応をしていくことが「支援(ケア)の質」の向上に必然と繋がっていくと思います。「真摯」という姿勢は「誠実」とは違い、あくまでも自分自身の行動に自分で問いかけ、行うことであります。この「真摯さ」を意識し、実施することができれば、アセスメントもより精度の高いものになり、ケアプランやその実施についての精度も上がり、「支援(ケア)の質」をさらに高めることができるのではないでしょうか。(施設長 金光建二)

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